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「夏も近づく八十八夜…」という茶摘み歌があります。5月になればそろそろ新茶の季節です。身近すぎて、毎日何気なく飲んでいる日本茶ですが、知れば知るほど奥深く、魅力のある飲み物です。お茶のプロに日本茶の楽しみ方を教えてもらいました。
■お茶の種類
茶の木は元々1種類しかなく、ツバキ科の植物です。お茶は大別すると緑茶、ウーロン茶、紅茶の3種類に分かれますが、どれも同じお茶の木から作られます。違いは加工法で、製造過程でお茶の酸化酵素をどの程度働かせるかによります。
緑茶は不発酵茶で、摘んだ茶葉にすぐ熱を加えて酸化酵素の働きを止めて作ります。紅茶は発酵茶で、酸化酵素を最大限働かせます。ウーロン茶は半発酵茶と言われ、酸化発酵を途中で止めて作ります。緑茶はフレッシュな分、紅茶やウーロン茶よりビタミンやカロチンが多く含まれています。
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番茶
新茶を一番茶といいますが、夏の陽射しを浴びて、硬く大きく育った2番茶、3番茶を使ったお茶です。渋みが強いのが特徴。
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玄米茶
もともとは番茶に炒った玄米をブレンドしたもので、香ばしさやまろやかさを楽しむお茶です。最近は煎茶を使ったものもあります。
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ほうじ茶
番茶やクキ茶など強火で焙煎したお茶です。香ばしい独特の香りが特徴で、食事の際のお茶などにぴったり。
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玉露
新芽が出る頃に茶葉を日光から遮って栽培します。苦味や渋みが少なく、甘味の強いお茶になります。
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煎茶
日本で生産されるお茶の80%が煎茶です。新葉を蒸して揉み、乾燥させて作ります。産地によっても、それぞれ特徴があります。
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抹茶
玉露と同様に栽培したものを蒸し、葉脈を取り除いたものを「碾茶」と言います。
これを石臼で挽いたお茶が抹茶です。
※写真紹介以外の緑茶の種類
◎かぶせ茶/玉露と煎茶の間くらいのお茶で、煎茶のように淹れ、玉露のような甘味があります。
◎深むし茶/煎茶の仲間ですが、新葉を蒸す時間を長く、蒸気量を増やして作ります。渋みが比較的少なく、鮮やかな緑が出ます。
◎クキ茶(かりがね)/煎茶の仲間ですが、茶葉の茎の部分だけを使ったお茶。さっぱりとした味です。
■おいしい淹れ方のポイント
お茶を美味しく淹れるポイントは3つです。
①茶葉の分量 ②お湯の温度 ③待ち時間
お茶の種類によって、それぞれ適切な分量と温度と待ち時間があります。
茶葉の量は、気持ち多めにしておくと、2煎目、3煎目まで美味しく飲めます。お湯はポットから注ぐ場合は、急須に直接ではなく、一度湯のみに入れてから急須に戻すようにするとよいでしょう。いったん湯のみに取ることで、湯のみが温まります。同時に、お湯の温度も下がるので、適温になるのです。さらに、湯のみに入れたお湯を急須に戻すことで、飲む人数分の湯量を正確に計ることができ、急須に余分なお湯を残さなくてすみます。
銘柄 | 分量 | 温度 | 待ち時間 |
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煎茶 | 約8〜10g(大さじ2杯ほど) | 70〜80℃ | 約40秒 |
玉露 | 約8〜10g(大さじ2杯ほど) | 50〜60℃ | 約2分半 |
ほうじ茶 | 約10〜15g(大さじ3杯ほど) | 沸き立てのアツアツ | すぐに注いでOK |
※2煎目からの待ち時間は半分〜1/3で
■回し注ぎ
お茶を注ぐ時は、まず①②③の順に少しずつ注ぎ、次に引き返すように③②①という風に2〜3往復すると濃さが均一になります。最後の一滴まで注ぎきりましょう。
お茶の保存方法
お茶は湿気、臭い、温度変化、光を嫌います。毎日飲むお茶は、茶筒などの密閉容器にいれて常温保存で問題ありません。開封後は2週間から20日ほどで飲みきるようにしましょう。
冷蔵庫での保存は、出して戻すを繰り返すと、温度変化が激しくなり、風味を落としてしまいます。また他の食材の臭いが移ってしまうこともありますので、注意してください。いいお茶をいただいたら、とっておきたくなりますが、いいお茶こそ美味しいうちに飲みきりたいですね。
休憩することをお茶にするとか、一服するとかいいますね。他にもお茶の子さいさい、日常茶飯事、お茶を濁す、お茶をひく…など、お茶を使ったことわざや言い回しはたくさんあります。日本人にとって、それだけお茶は身近な存在ということなのです。お茶のことをもっと知って、もっと美味しく飲みましょう。
■お茶の歴史
日本にお茶が入ってきたのは平安時代、遣唐使がお茶の種を持ち帰ったのが始まりとされています。当時はとても貴重で、貴族や僧侶しか飲む事はできなかったのです。
鎌倉時代の末期から茶の湯が広まり、千利休によって現在の「茶道」が完成されました。江戸時代になると茶の栽培量も増え、一般庶民でもお茶が飲めるようになりました。煎茶や番茶などを飲むようになったのもこの頃。「日常茶飯事」や「お茶の子さいさい」といった言葉が生まれたのも、一般の人々が日常的にお茶を飲むようになったからです。
■飲んで健康に
世の中にはさまざまな健康茶がありますが、クセがあり飲みにくいものも多いですね。わざわざ特別な健康茶を飲まなくても、緑茶そのものがビタミンC、テアニン、カテキンなどの成分が含まれている健康茶なのです。昔から日本で飲み続けられてきた緑茶は、無理せず自然に飲み続けることが出来ます。健康維持のためにも、積極的に緑茶を飲んでみませんか。
■こんな時に一杯
普段の食事のあと、たいてい緑茶を飲みますが、これには理由があります。緑茶に含まれるカテキンが食中毒やムシ歯の予防に役立ち、フラボノイドの力で口臭の予防にもなるのです。昔の人は、知らず知らずのうちに、こんな効用を利用していたのかもしれません。
朝と夜にも緑茶を飲むことをおすすめします。朝のお茶は眠気を覚まし、頭をすっきりさせてくれます。夜はカフェインの量の少ないほうじ茶などが安心です。
■家でも抹茶
普通の家庭では、あまり飲む機会のないのが抹茶。なんだか敷居が高くて堅苦しいイメージがあるのかもしれません。でも、抹茶はとても便利なお茶なのです。
まず、茶殻が出ないので後片付けが簡単。お湯の温度や待ち時間なども気にする必要がありません。特別感があるので、おもてなしには特にぴったりです。抹茶は茶葉そのものを食べるのと同じですから、茶の持つ栄養素を全て摂取できると、いいことづくめです。
■新茶の季節
新茶は4月初めから5月末までに摘み取られた茶葉を利用して作ったお茶です。若いフレッシュなお茶は旨味も栄養もたっぷり含んでいます。そろそろ新茶が店頭に並び始めます。この季節しか味わえない旬のお茶を、じっくり味わってみませんか。
■お菓子とお茶
お茶といえば、和菓子か煎餅と思いがちですが、抹茶におすすめなのがチョコレートです。抹茶のほろ苦さとチョコの甘味が意外にマッチします。抹茶チョコはよくみかけますが、抹茶とチョコもぜひ試してみてください。
■冷茶
暑くなってきたら、煎茶を水で出した冷茶を飲んでみませんか。水1ℓに対して煎茶10gの割り合いでポットに作って冷やします。色が鮮やかできれいなお茶が出ます。手作り水だし煎茶をマイボトルに作って持ち歩けば、ペットボトルよりおいしくて、エコにもなります。